
映画を観るのは年間10本以下、劇場で観る機会に至っては年間5度以下のオレに映画評などできないが。
ライター時代、和食・日本料理をメインに担当していた身として、感想程度は残しておきたいな、と。
結論から述べると、日本人なら誰しも一度は観て欲しい。
単に手間暇かけて作られる要素の事でなく、日本の食が如何に自然・風土・地形・風習と密接に結び付くものか。
明確な四季の存在と、南北に長く、海に囲まれ、山が広がる、日本特有の表情豊かな環境。
その中で育まれ、先人より脈々と受け継がれてきた伝統の希少さ。
自然と共に生き、素材そのものを生かす事、その難しさと面白さ。
既知も未知もひっくるめ、そんな事柄を改めて感じさせてくれる映画だった。
また、映像としてはスーパースローや早送り撮影を駆使し、だしや醤油、その他あらゆる仕込みの動きを素材感たっぷりに切り取り、見ていて実に流麗で美しいものだった事も付け加えたい。
またこの日は、本作の監督の柴田昌平氏(写真左)、本作に登場する祇園の料亭「川上」主人の加藤宏幸氏(同右)によるトークイベントが、上映後に開催された。

映画を観ただけでは分からない、職人のイズム。
「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録された一方で、着実に訪れている和食の現場の崩壊。
日本人として、何を守らなければならないのか考えさせられる、濃密なトークショーとなった。
普段からラーメンをアホほど食っているからお分かりかと思うが、行き過ぎた健康志向礼賛や、食品添加物をヒステリックに批判する事を支持するつもりは更々ない。
ただ、普段から極力(近所やネットで買える範囲で)真っ当な製法で作られたものを買うようにしているし、インスタント食品やジャンクフードのチェーン店を利用するのは深夜残業や徹夜などの非常時に限るようにしている。
今後もそのスタンスはそれほど一気に変化しないだろうし、物理的・時間的にそこまで変更もきかない。
食品表示検定を受検したのも、ある程度は自分の身を守るためだし。
いち個人で、できる範囲で良いので、守るべきものを守っていこうという風潮が起きたら良いな、と。
この映画がもっと多くの国内の映画館で上映されれば、日本人がもっと日本を好きになる気がする。
尚、東海地方の方には、シネマスコーレでの上映は2/27(金)まで。
気になった方は、どうぞお見逃しなく。
日仏合作ドキュメンタリー 『千年の一滴 だし しょうゆ』
オフィシャルサイト/http://www.asia-documentary.com/dashi_shoyu/index.html
facebookページ
スポンサーサイト